愛って…。

行きつけのBerがある。

独身の頃から、ずっと友だちと食事をした時は必ず、立ち寄って帰るといった、 なじみの店。

とても、安心できる空間で…。 （でも、私は、飲めません。本当にたしなむ程度です。）


友だちとの食事の後、いつものように立ち寄って話をしていた時のことだった。

カウンターの席に座り、いつものように友だちとお店のスタッフで話していると…。 隣の席に座っていた推定年齢、45歳ぐらいのオジサマがこちらに話しかけてきた。


「お嬢さん達、自分は、今一番、何が大事か？」 と問うのです。

もちろん、楽しい会話。
お酒も入っているせいか、みんな調子よく答えていきます。

私の今、一番大事なものは、仕事と子どもと答えておきました。
（順位をつけれないんです。一番というと…。）

それを聞いたオジサマからは、意外な答えが返ってきました。
「僕は、それでいいと思うよ。
子どもも大事、だけど子どもを養って行く上では、仕事も大事。
いいじゃない。自分にとって大切な仕事。
生活の上でも大事な収入源だし、 自分にとってもいいステイタスになるのだから。
でも、子どもに押しつけちゃダメだよ。
あんたたちのためにがんばってるみたいなことだけは言っちゃいけないよ。
それがなければ、仕事が一番でもいいんじゃないかな？」

そんな風にいって下さる方が今までいなかったので、
とてもしんどかった心の線が切れたような そんなカンジがしました。
どこに行っても、子どもが大事でしょ。と言われていることに飽き飽きしていたのです。
もちろん、子どもも大事、分かっていますしもちろん大事にしています。

だけど、どこかで、仕事に対する情熱は消えないのです。

「で、それくらい子どもを愛しているなら、子どものために何でもできるだろう。」
「もちろん！」
「旦那さんに対しては？」
「…。」

正直、何も答えられませんでした。

「僕はできるよ。彼女（妻も含め）が、介護が必要になれば、お世話もするし、
排泄物だって平気、 いくら交通事故で顔が誰か解らなくなっても、大丈夫。
ずっと愛していく自信は、あるよ。」
「顔が解らなくなってもですか？」
「年老いたって姿、形は変わる。どんな形であれ、
愛があればその人がどうなっても、ついていけるんだ。」
「…。すごいですね。」
「当たり前だよ。愛するってそういうことだよ。」
「…難しすぎて…。」
「じゃあ、キミはこの人のためなら死んでもいいと思ったこと、あるかい？」
「…正直言ってないですね。お恥ずかしながら…。」
「僕は、あるよ。車を運転しながら「このまま、死んでもいいな…。」って。
それくらい、仕事に向ける情熱があるなら、愛もそこまでいく愛がなくても不思議はないと思うなあ。」

「…、愛って深いですね。
女の人より男の人の方が、愛が深いのかも知れませんね。
女は淡白ですから。（笑）」
「いい愛をみつけられるといい女になるよ。今よりずっと（笑）深みのある魅力的な女に。」

まだまだ、愛の深さを知らない私は、まだまだ未熟者…。
オジサマは色々なことを経験されてきて、愛の深さを深めたのだろうけど…。
私も、色々な人に出会い、どんどん人とのつながりを深めて、
愛情も深めて…。
いけたらいいかな…。

果たして、こんな私にオジサマのいう「愛」ができるのだろうか？

「ありがとう。オジサマ（笑）。
今度お会いする時にはきっと深い所をお見せできるようがんばってみますね。
また、お会いできればいいですね。」

「こちらこそ、楽しいひとときありがとう。では、また、この場所で（笑）」